『東の地で』の欠片


2016年1月4日

「言葉のひとつひとつが、短いけれど、心にひびきました。心の動きを、丁寧な言葉で、そして演技で伝えて下さり、心にしみ入るものがありました。相手を変えることはできない。でも自分と向きあうこと、相手と向きあうことはできるのではないかと、勇気をもらいました」(53歳女性)


昨年二月、『東の地で』というお芝居を上演しました。
学生としては最後の演劇の公演。そのとき観客の方々に書いていただいた感想を読み返してみました。いくつか抜粋します。

・「コトバはあまりにも不充分で、互いに分かったつもりになることしかできない。でも、コトバに頼ること、チカラを信じることの魅力を改めて感じました。合理的とは言えない人間性の発露を愛し合うこと、互いの関係そのものはとても不安定でどうしようもないが、正面から向き合うことの大切さについて考えさせられます。素敵な演劇をありがとうございました」(22歳男性)

・「胸があたたかくなったり、痛くなったり、『生きる』とは、『優しさ』とは、『愛』とは何だろうと、改めて考えさせられるきっかけになった様に思います」(年齢性別非公開)

・「生という存在があって、死という存在があって、時に2つは重なって、いずれはどうなっていくのだろう」(54歳男性)

こうした文章を読んでいると、作品を創るという行為は、本当に受け手が心からその作品を受け取ってくれたときに、カタチになるのだと実感します。当たり前のことですけれど、そのめぐりに感謝したい。

・「特別な話ではなく、でも絶対に特別な自分にとっての何か。すーっと心に入る楽曲にのせて、魅力のこもったお二人の演技にとても感動しました。すてきな作品でした」(23歳女性)

・「精神を消費し尽くさずにはおかないこの社会と、知性を疑うことにのみ造り上げてきたこの東の地の片隅で、こんなに脆く、こんなに繊細で、こんなに素直な芝居があることを、福音のように感じたい」(23歳男性)

また遠からず、演劇の公演も打ちたいものです。
でも、公演をすることより、もっと長い目で作品を創らなくてはとも思います。

私という一個の人間にとっては、「今」がすべてだけれど、
作品にとっては、「今だけがすべてではない」のですから。


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